自分が、いいな、と思った文章に常に触れること。
それが、自分の「かく」ことの力、エンパワーにもつながるな。本日は、天声人語から。
大学1年の夏に、ブルートレインで西に向かった。〈私が育った家からは佐世保湾が見渡せる。狭い平野部のほぼ中央に米軍基地はあり、朝夕には、アメリカ国歌に合わせて星条旗がはためいた〉。彼が朝日新聞への寄稿で描いた故郷の景色を見てみたかった。40年近く前のことだ▼作家の村上龍さんが亡くなった。かつて「春樹か龍か」が、文学好きの若者を二分した時代があった。まるで「ビートルズかストーンズか」と同じように。筆者は龍派だった。性や暴力をむき出しで描く筆致に心酔した▼幼い頃から“占領者”である米国が身近にあった。創作の底流では、権力やシステムと対峙(たいじ)しつつ、強く豊かな異文化への憧れもあった。まさに戦後が生んだ作家だった▼やがてバブルが崩壊する。その関心は、混沌(こんとん)の時代を一人ひとりがどう生きるべきかに向いていった。人を鋳型にはめる近代の考え方から、いかに自由になるか▼2003年の『13歳のハローワーク』では、〈この世の中には2種類の人間・大人しかいない〉と記した。自分の好きな仕事や向いている仕事で生活の糧を得ている人か、そうでないか。そして「好奇心」こそが、自分らしく生きるための重要な武器だと呼びかけた▼この3月まで、テレビ番組のホストとして気鋭の経営者らと対談を重ねた。訃報(ふほう)に接して、対談をまとめた書籍を開いた。〈規制と既成を突破する〉。社会に変革をもたらした人たちを称賛する言葉が並ぶ。最後まで好奇心の人だった。
自分らしく生きるための重要な武器は、「好奇心」である。
権力やシステムと対峙、豊かな異文化への憧れ、
私が幼い頃から抑圧されてきたもの、そして異世界への憧れは、ここかもなあ。